オールドタウン2-3より飛び立った小型艇は、檻を監視する警備隊により爆破された。
乗員は二名。一人は生体反応なし。
残る一名は爆破後に死亡を確認。
それが炎の中を逃げ出した青年と少年が、数時間後に知った事実だった。
この事件が知れ渡り数年後、マリトが言っていた地球でのタウンという名の刑務所に対する反対運動が支持派を押し込み始めた。
すべてが撤廃されるまでにはまだ十年以上の月日が必要だったが。
ケイニーはマリトと暮らしていた。
数年前までは母親のアシュカもいたのだが、夫を失った心労がたたり、帰らぬ人となってしまった。
「僕は、ゼンガさんだけでなくアシュカさんの寿命まで縮めてしまったね」
「マリト?」
「それだけじゃなく、君もずいぶん傷つけたと思ってる」
「今さら」
「うん、今さらだね。今まさらついでにもう一つ告白」
「なんだよ」
「あの時、ゼンガさんに協力しようとしたのは、母を裏切ったくせに今さら地球に帰りたいなんてふざけるなと思ったんだ」
「・・・・・・」
「未遂の殺意があったのかもしれない」
「そっか」
「でもゼンガさんは君達を大切にしていた。途中から君への嫉妬ばかりだった」
「ほんとにオレ以外には愛想良かったよな」
「アシュカさんもね、結構好きだったんだ。君に成り代われたらと思った」
「ふ~ん」
「ここには地球では得られなかった家族があった。僕が手に入れるはずだった、ね」
「うん」
「でも最後は本当に地球へ帰ってほしかった。母に会ってほしかった」
「何だかんだでお前の勝ちじゃん。親父はお前の方を選んだし」
「え? それは違うよ」
「なんだよ、別に同情してくれなくていいぜ」
「違うって。ゼンガさんはどっちを選ぶとか、そんなんじゃなかった」
「でもオレと母さんを置いて行ったろ?」
「う~ん、そうだけどね。でもやっぱり選んだとかそういうんじゃないんだよ」
「全然分かんね」
「はは、僕もうまく言えないや」
「いつか、地球に帰れる日が来るかもね」
「そうか?」
「君は地球を知らないだろ? 一度くらい檻じゃない空間を味わってほしいね」
「へ~、何? 兄心??」
「兄、ねえ。全然ピンとこない」
「こっちだって」
「もし地球に帰れたら、一緒に僕の家へ帰ろうか?」
「は? はぁぁ!?」
「だって、ここじゃ僕はアシュカさんに面倒見てもらってたし」
「それは、親父がいた頃だってそうだっから」
「じゃあ聞くけど、一人で生活できる? 君、その年でまだ家事できないよね」
「う・・・・・・」
「さの、さ」
「ん?」
「オレが親父の事でお前のとこに駆け込んだ夜。どうしてオレとお前の親父が同じだって教えたんだ? それもオレへの嫉妬から?」
「あの時点では違うかな。君が僕に嫉妬してくれた時点で、なんだか君を傷つけるのがバカバカしくなったんだ。まあそのちょっと前からそうだったんだけど」
「ふ~ん、そういえば後悔するなってオレに言ってたもんな」
同じ父を持つ青年たちが地球へ帰る数年前の会話である。
-完-
大して長くないのにちょうど一年半ほどかかってしまいました。
でもずっと書きたかった話なので、何とか完結してよかったです。
主人公がどうなるかだけは考えていたんですけどね。
実はこの話を考えた一番最初はファンタジーの設定でした。
一体どこが?
とつっこまれそうですが(笑)
ちょっときっかけは忘れたのですが、急に物語がSFにシフトしまして、主人公ももう少し若かったのですが、おじさんになってしまいました。
なので息子たちの設定なんて最初はありませんでした。
なのにいつの間にか息子たちが目立つ小説に……
一番最初ファンタジーだったという話ですが、この話を考えた時に書きたかったのは「帰る」という事でした。
ただ単に帰るのではなくわがままというか、エゴ的な意味での「帰る」です。
SFに設定がチェンジした時点で、ちょっとその意味が薄れたので、エゴ的な意味で「帰る」という設定を残したくてできたのが息子たちと奥さんです。
今自分がいる場所ですでに生活が成り立ち、待つ人、引き留めてくれる人がいるのにどうして?
という意味でアシュカとケイニー。
別の場所への未練としてマリトが出来ました。
なので日常の会話が多いのです。
(もちろんSF的な考証を書くのが無理、というのもあるのですが)
エゴ的な感じに書きたかったので、ゼンガは特に地球へ帰りたいという思いが強かったりしませんし、口にしません。
ファンタジーの時点では「帰る」という意思が強かったのですが、SF話を変えた時にちょっと保守的になってしまったのかも。
とまあ個人的にはそんな感じで書いていたのですが、小説の中でそれが書けているとはいえませんね。
とにかく読んでいただいた方、長くお付き合いいただきありがとうございました。
(2013.8.26)